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金屋町



町屋

天井裏
みせの天井を張り替えた時のことです。
親戚を頼って、井波町の大工さんに来てもらいリホームしてもらったのですが、
思いがけず大変な作業となってしまいました。
他の部屋へほこりがまわらないように、青いシートを壁や戸に掛け、床にも敷きつめました。
石畳の道に面した所の障子戸だけ開けて作業が始まりました。
大工さんが天井板を一枚外す度に、どどどーと音を立てチリやら埃やら、
すすやらが落ちてきて、そしてまた舞い上がるのでした。
あっという間に部屋の中が見えなくなってしまうほど黒い煙幕に包まれてしまいました。
外も大変です。
モクモクと火事場の煙のように、千本格子(さまのこ)の間から埃が漏れ出してきています。

作業を終えて出てこられた大工さん、気の毒でみられないほどに真っ黒。
石鹸をつけて洗っても簡単にとれるものではありませんでした。
「今日はまだ早いけどこれで帰らしてもらうちゃ。明日は日曜日やから、
 おあんさんもおられるやろうから、ちょっこ片付けといてくだはれ」と帰っていかれました。
大工さんにはただただ恐縮してしまった日でした。

次の日、家族で掃除をしたのですが、これもまた大変でした。
床のシートの上に、大げさでもなく2〜3センチ程すすが積もっていたのです。
まず、スコップとチリトリですくって肥料袋に入れ、それからほうきで掃き集めたのですが、
ちりは舞い上がってばかりでなかなか綺麗になりません。
皆マスクをしていたのですが、鼻のまわりが熊吾郎状態、お互いの顔を見合って大笑いでした。

月曜日、いつもは必要なこと以外は喋らないといった昔気質の大工さんが、
「綺麗になってるね、昨日は大変だったやろ。これまで何度も天井の張り替えはやってきたけど
 こんなにひどいのはなかったなぁ。」と、話してくれました。

金屋町で鋳物を吹いていた頃、町中に漂っていたすすが天井裏に忍び込んできていたのでしょう。
天井裏に金屋町の歴史が残っていたんだということでしょう。